No. 105 (Fri)
dayline

Date 2006 ・ 10 ・ 06

 今宵は朔。
 付きもなく夜空に瞬くは無数の星のみ。

 虫の控えめに囁く夜半過ぎ。

 枕元に相棒の二本槍。以外にも綺麗な寝相で布団に納る幸村の姿があった。

 
未分類 // コメント(0) // トラックバック(0) // Top

No. 104 (Wed)
dayline

Date 2006 ・ 10 ・ 04

 戦の合間。
 つかの間の平穏に、久方ぶりに幸村と散歩をした。

 秋の空は優しく晴れ上がって、新しく出来たお団子屋さんはなかなかに美味しくて。夕暮れ時、邸に向かう二人の足取りはのんびりゆったりしていた。

 私は小さな幸せを噛み締める。

「いつまでも一緒にいられたらいいね」

 唐突にそう呟いた私に、幸村はきょとんとした顔をした。

 
SSS // コメント(0) // トラックバック(0) // Top

No. 103 (Wed)
dayline

Date 2006 ・ 09 ・ 27

 放課後の廊下。
 グラウンドからは運動部の威勢のいい掛け声が聞え、一棟離れた場所から吹奏楽部の楽器の音が零れてくる。文化部の部室になっているような教室を除き、概ねの教室には人影はなくがらんとしている。私は生徒会の会議用の資料の束を抱えて小走りに廊下を急ぐ。





 赤子の身体に大人の魂。
 女児の身体に男の自我。
 時代劇でしか見ないような田園風景に人々の新鮮さ。
 高層ビル群に区切られた空に汚染された濁った空気の懐かしさ。

 相反するものが内在する混沌は、「はる」と名付けられた赤子にある種の諦観と達観でもって幾度かの三度ほど季節をやり過ごした。けれども季節を重ねる事に育つ赤子は、やはりその特異性故かあまり「ふつう」の子供には育たなかった。もっとも、彼…いや、彼女が普通と違うと言うことが周囲に自覚されるより早く、小さな集落は戦火に包まれてしまったのだが。

 その日は、いつもと同じ朝だった。

 朝日が昇るより早く家族は起き出して、畑仕事を手伝える年頃の子供たちは畑仕事を。田に出る事の出来ない子供も、家の中や周辺の細々とした家事を手伝う。それも出来ないような小さな子供は、よく食べよく泣きよく眠り早く大きくなることが仕事だ。
 畑仕事が一段落すれば少し襲い朝餉を食べ、少しの休憩の後にまた各々の仕事を始める。

 まだ満足に家の手伝いも出来ないはるの出来ることと言えば、春先に生まれた男の赤子の面倒を文字通り「見る」位のもだった。

 昼には、不穏な会話が聞えた。戦が近い。大きな戦がある。そんな会話だった。

 はるは(桂は)、この集落から出たことがないので、この時代が一体いつ頃なのか分からなかった。家族や周り近所の服装や暮らしぶりから見て桂の生きていた時代からは大分隔たっていることは分かったが、如何せん農村は政治と接点が薄い。親の囃子やぽつぽつと聞える大人同士の会話の端々から、辛うじて「いくさ」や「おさむらい」という単語が零れる程度だった。

「いくさ…。いくさ、ねぇ。めずらしくないみたいだしなぁ、えどよりもっといぜん、かな」

 三つの子供の舌っ足らずな発音に見合わぬ思案の口調だった。はるは小さな手でむずがる弟をあやしながら、天井の大きなしみを仰いだ。

「せんごくじだいだったりしたら、わらえないよなあ」

 まあ、どっちにしてもこの現状からして既に笑えないのだけれども。

 それから普段通りに日暮れ前に夕餉を済ませ、日が沈みきった頃には家族全員が床に付いた。





 怒号と悲鳴と熱さと煙たさで目が覚めた。 
覚え書き // コメント(0) // トラックバック(0) // Top

No. 102 (Mon)
dayline

Date 2006 ・ 09 ・ 25

凍ってしまえばいい。

この声も
この鼓動も
この心も
この涙も
この想いも

この愛、も

全て凍り付いてしまえばいい。


そうすれば永久凍土の大地で砕き、千々とばら撒いてしまうのに。


この想いも この痛みも この愛も、
永久に消えることも集まることもと溶けることもなく、永遠の大地で凍り付かせてしまえたらいいのに。 
SSS // コメント(0) // トラックバック(0) // Top

No. 101 (Sun)
dayline

Date 2006 ・ 09 ・ 24

 最後の記憶は校舎の中。
 職場である保健室の己のディスクに向かって、書類を作成しているところだった。

 サボリに来たガキ共をあしらって追い返し、若さの有り余って怪我をした子供の手当をして体調を崩した子供をベッドに押し込み、カウンセリングと行かないまでも昨今の若者の悩みを聞いてやる。そんなことをしていた、一日の動きを日誌に記しているところだった。

 秋風が優しくカーテンを揺らし、ふわりふわりと襲い来る眠気。
 どうせ誰もいないし、必要があったらお声が掛かるだろう。そんな言訳にもならない言訳をして、俺は重力に従って目蓋を閉じた。

 右手に持ったペン。だらしなく左肘をディスクについて、その手に顎を乗せて。はらはらと風がノートをめくってゆく音を遠くに聞いて、緩やかに眠りの世界へと旅だった。





***



 
SSS // コメント(0) // トラックバック(0) // Top