ノート貸して、そしてラブレター
階段を上りきる。右手に曲がって続くのは無駄に長い廊下。
ぱっと視線を上げると、一際目を惹く鮮やかな揺れるハニーブロンド。行き過ぎる生徒の思わず視線を吸い寄せられる様が、何となく虫取り用の甘い匂いのする粘着テープを思い起こさせて笑える。
「ガーイーーーーーーっ!!」
スタートダッシュと共に上げる声。驚いて振り向くのは彼よりも周りで、彼は慣れた感じでゆるりと振り向いた。そして、ちょっと驚きに軽く目を見開いた。
「わ、ばかっ!」
「ダーーーーーーッイブっ!!」
「どわっ!!」
危ういところまで制服のプリーツスカートを翻して、思い切り助走を付けて踏み切る。ぎょっとしたガイは慌てて手を広げて、宣言通り勢いよくダイブしたシアを受け止める。結構な勢いを位を付けて飛び込んだが、文化部のクセに体格のよいガイは数歩たたらを踏んだだけで難なくシアを受け止めた。
「あ、危ないだろー! 何処かぶつけてないか?怪我なんかしてないだろうな?」
「へーきへーき、」
怒っているのと呆れているのと心配なのとで大層面白い顔になっているガイにへらりと笑えば、呆れと安堵で反則ものの表情を作る。シアよりも周りで見ていた女子生徒の方が、ほう、と溜息を吐いた。
「で、どうしたんだ?」
通行の邪魔になるからと廊下の壁側に移動しながら問うてくるガイ。シアはにこりと人懐っこい笑みを浮かべてガイに向かって両手を差し出した。それから愛らしく小首を傾げてみせる。
「譜業学のノート貸して?」
「またかい?」
「またなの。だってガイのノートが一番分かり易いんだもの!」
ただし本人に教わろうと思うと懇切丁寧なのは良いのだが、マニアックに脱線していく上に丁寧すぎて長ったらしいので勘弁だが。そんな本音は胸にしまって、上目遣いに「駄目?」と問えばガイは一瞬言葉に詰まってから肩を竦めて「まさか」と答えた。
「シアはほんとに「おねだり」が上手いよな」
「ピオニー先輩直々にご指導頂いてるからね」
「まったく…、末恐ろしいというか何というか…」
「失礼ね! 末頼もしいと言いなさい」
なんて事を言い合いながらガイの教室へ入ってノートの授受。
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